公開日: 2019年12月20日 - 最終更新日: 2020年3月11日

雄樹園

JAPAN BONSAI 編集部
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関東平野の北西端、赤城山南麓に位置する群馬県前橋市。「赤城おろし」で有名な寒く厳しい自然環境と土地の貧しさから、古くは養蚕や絹繊維産業で栄えた地。そんな群馬県前橋市に、その人柄から多くの人々から慕われる群馬の盆栽界パイオニアがいるという。今と違い情報が全くなかった時代に、大宮や東京とのパイプを自らの足でつくり、たくさんの実験を繰り返し、ノウハウを蓄積してきた。その人物は群馬の盆栽界をリードしてきただけでなく、聞けば「盆栽」から世界の「BONSAI」へと導いた世界盆栽展開催の影の立役者でもあった!?

上州人気質の盆栽職人 雄樹園

かかあ天下とからっ風

「上州名物数々ござる、かかあ天下とからっ風、おっとまだある長脇刺…」。この有名な台詞は、国定忠治を語る浪曲の冒頭部。富岡製糸場で有名な群馬は、古くから養蚕業が発展。養蚕や機織りは繊細で勤勉さが必要とされ、主に女性の仕事であり、女性は男性よりはるかに高額の収入を得ていたようだ。一方で懸命に働く女房を自慢しつつ、宿場町で賭場もあったことから男性はバクチ好きが多かったとか? どうやらその昔は、一家の経済力の主権が逆転し女性に多くあったこと、気丈で真面目な上州女性と男性とのギャップ等から、「かかあ天下」と他県人から揶揄され広く知られるようになったようだ。夏は暑く、冬は寒く雨が少ない乾燥気候、そして歴史が育てた地域特性からくる上州人の県人性からうまれた言葉なのだろう。前置きがやや長くなってしまった。若干それてしまったので、ハリガネ巻いて矯正、主題に戻すとしよう。

さんざん遊んだ人が最後に

そーだな、浮気、酒、ギャンブル、さんざん遊んだ人が最後にたどり着くんだよな、盆栽に(笑)。 身体こわれてても、死ぬまでできるんだからなぁ。健康にも良いんだと思いますよ。なんといっても、盆栽いじってる時は何も考えない。没頭できる。目の前の事に集中するから、無だね。まさに無の世界だよ。自分もいろいろ勉強させてもらったし、ずいぶん救われたと思うよ。(盆栽)やってなかったら、自分なんかダメになってたんじゃないかなぁ。仲間ができるってのも良いね。盆栽ひとつで世界が広がるんだ、本当に信じられないくらい。他の趣味もそうだろうけど。そーだな、盆栽はきっと、お茶とか、花とかと一緒で“道”なんじゃないかと思うよ。

少年のように無邪気に語るのは雄樹園の園主、石井英雄さん。造園業を営む父の四男坊として生まれ、大手メーカー勤務から一転、盆栽の世界に入り早40年。今では手入れ、メンテナンス、仕入れ、販売、対象も小品から中品、大品と問わず、ほぼ全ての事に精通しているオールラウンダーだ。早くから組合に入り、大御所と呼ばれる大先輩達から多くのことを学んだ。気づけはご自身が業界では大御所的な立場にもかかわらず、偉ぶることは微塵もない。正直で人間味に溢れ、義侠心厚く、陽気で楽天的だ。そんな人柄からか石井さんの周りには絶えず老若男女問わず人が集まり、笑顔が溢れてる。そんな氏に日頃から思ってる事を語ってもらった。

新しいことにチャレンジを

JAPAN BONSAIの取り組みを、どうお感じになられますか?

必要だね。絶対に必要だよ。インターネット?ユーチューブ?正直、新しい事はよくわからんけど。どんどん積極的にやってもらって、情報出していって欲しいね。自分たちはできないから、若い人、できる人でね。大賛成だから、外国に負けないように努力して欲しい。世界に発信できるからな。早い時代だけど先を読んで、何でもやってみないと。

様々な楽しみ方

若い人や初心者にアドバイスをするとしたら?

盆栽って、もっと色んな楽しみ方あるんだよ。本当は。例えば、若い夫婦が「盆栽教えて欲しい」って教室に来てるんだけど、俺がアドバイスしてるのは「若いからサシメ」しろって。例えば、ふたりに子供ができたとする。その時に挿し芽する。その子が成人した頃、つまり20年経ったとしたら、えらい木になってるよ。20年も経てば凄い木になるよ、雑木だって松伯だって売れるような物になってる。これが大事。間に合う。間に合うから。

「サシメ」ですか?

そーだよ、「挿し芽」したり「実生」したり。そういう事をしなければダメだよ。
これだけ外国に樹を出てしまってるんだから、現実にないよ。ない。素材が。
先代がつくった物を売ちゃって終わり。という人も多いけど。
これは、えらい事だよ。本当に。う〜ん。(ため息まじり)
だから、「つくる」って事を、皆にやって欲しい。絶対に。
枝切ったら挿しとけって、実をまいとけって。そんな事から始めようって、皆に言ってるよ。それで、5年経てばある程度になるんだから。10年もすると立派な物になってるよ。現実、それをやる人が今いないんだ。業界では右から左へってバイヤーが多いけど。つくるって事は10年、20年かかる事。だから、つくり手をどうしても増やしたい。増えてもらいたい。

年配者より、若い方に?

そうだ!若い時に挿しとけば10年なんてあっという間だから。30代で一所懸命仕事して、子育てして、落ち着く頃だと50過ぎちゃう。50って事は20年近くでしょ。だから若い時にはじめる。絶対に無駄じゃないから。つくるって事を皆にやって欲しい。自分の代じゃない、次の後世のために、世の中のために、間に合うから。絶対につくるってことをあきらめないでやって欲しい。そんなに数あるものじゃないから。なんだってやってみないと..。

雄樹園へのアクセス

雄樹園
〒379-2132 
群馬県前橋市東善町695-6
TEL027-267-1200
石井さんの盆栽教室
会場:ベイシアIS伊勢崎店4F
開催:隔週土曜(13:00-15:00) 第2、4週
問い合わせ先 イズカルチャーセンター(TEL0270-26-1119)
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